個人開発ソロプレナーBuild in Public

個人開発で6つのプロダクトを同時に運営してみている話 — まだ何者でもないけど、全部見せる

個人開発で6つのプロダクトを同時運営中。収益化はまだ。技術スタック、時間配分、うまくいっていないことも含めて正直に書く。


個人開発で6つのプロダクトを同時に運営している。いや、正確には「運営しようとしている」。

Float Engineeringという合同会社を一人でやっていて、受託開発で生活費を稼ぎつつ、自社プロダクトを6つ立ち上げた。立ち上げた、というと聞こえがいいけど、正直に言うとまだどれも大きく収益化できていない。

この記事は成功事例ではない。「6つのプロダクトを運営して月商○○万円」みたいな話は書けない。書けるのは、今まさにやっていること、使っている技術、時間の使い方、そしてうまくいっていないことだ。

同じようにソロで何か作っている人に、リアルな情報を届けたい。それがこの記事の目的。

こんな人に読んでほしい:

先に断っておくと:

なぜ複数プロダクトなのか

きっかけは「1つに賭けるのが怖かった」

かっこいい理由があればよかったんだけど、正直なところ、1つのプロダクトに全力投球する勇気がなかった。

個人開発の成功事例を見ると、catnoseさんのZennやなるがみさんのSkebのように、1つのプロダクトに集中して突き抜けたケースが多い。それが王道だとわかっている。でも、そのプロダクトが外れたらゼロからやり直し。その恐怖があった。

だったら小さいのをたくさん作って、当たったものに集中すればいいんじゃないか。Pieter Levelsが「12ヶ月で12のスタートアップ」でやったように。

…と、頭ではそう考えた。結果どうなったかは後で書く。

今運営している6つのプロダクト

具体的に何を作っているか、正直な状況とセットで書く。

  1. 爆速ホームページ — スタートアップ向けWebサイトテンプレート。Next.js + Tailwind CSSで構築。自分が使っているボイラープレートを商品化した。→ たまに売れる。手離れはいい。
  2. 転職DB — ChatGPT APIで1,000件以上の転職エントリを要約して、会社別・職種別に整理したデータベース。→ SEO流入は少しあるが、マネタイズが弱い。
  3. Calen — ファン駆動型イベントカレンダー。→ コールドスタート問題を解決できていない。ユーザーが集まらないとコンテンツが増えず、コンテンツがないとユーザーが来ない。
  4. webmusic.app — Web上の音楽体験サービス。→ 技術的に面白いけど、「誰がお金を払うのか」を考えずに作ってしまった。
  5. AIのあとしまつ — AI生成コードを本番運用レベルに仕上げる受託サービス。50〜120万円。→ ニーズはあると確信しているが、まだ実績が少ない。
  6. LITMUS — 新規事業の仮説検証スタジオ。6週間でAIプロトタイプを構築する。→ 最近始めたばかり。

6つ全部が順調、とはとても言えない。正直、半分は「作ったけどどうしよう」状態。でも全部動いていて、全部自分で管理している。

技術スタックを統一している理由

複数プロダクトを1人で触り続けるために一番大事だと思っているのは、技術スタックの統一だ。

全プロダクト共通の構成

| レイヤー | 技術 | なぜこれにしたか | |---------|------|----------------| | フレームワーク | Next.js (App Router) | SSR/SSG/ISRが全部入り。困ったら公式ドキュメントを読めばだいたい解決する | | スタイリング | Tailwind CSS | プロダクト間でクラス名の意味が同じ。頭を切り替えなくていい | | バックエンド/DB | Supabase | 認証、DB、ストレージが全部入り。無料枠が個人開発に十分 | | CMS | MicroCMS | 日本語対応のヘッドレスCMS。ブログやニュースはこれで管理 | | デプロイ | Vercel | Next.jsとの相性がいい。git pushで自動デプロイ | | DNS | Cloudflare | 6つのドメインを一元管理。無料 |

この構成にした理由は1つ。朝に爆速ホームページのバグを直して、午後にCalenの機能追加をする時に、頭を切り替えなくて済むから。

どのプロダクトを開いても同じNext.js、同じTailwind、同じSupabase。「このプロダクトのDBはFirebaseだっけ、MongoDBだっけ」みたいな迷いがゼロ。これがなかったら6つは絶対に無理。

ボイラープレートの使い回し

最初のプロダクトを作る時に、認証フロー、SEO設定、お問い合わせフォームなどの共通部分をテンプレート化した。2つ目以降は、ここから展開する。

新プロダクトの立ち上げは、最初は2〜3週間かかったのが、今は2〜3日で基盤が整う。認証が動く、DBにつながる、デプロイが通る、ドメインが設定されている。ここまでが初日。

爆速ホームページは、このボイラープレートをそのまま商品にしたもの。自分が使っているものを売っている。

AIコーディングのリアル

Claude CodeとCursorを使い分けている。

体感では開発速度が2〜3倍になった。特に「やればできるけど面倒な作業」——テスト生成、API定義、ドキュメント——が速くなった。

ただし、AIが書いたコードをそのまま本番に入れると痛い目を見る。エラーハンドリングが甘い、N+1問題、型がanyだらけ。「AIのあとしまつ」を作った理由はまさにこれ。自分自身が「あとしまつ」を日常的にやっているから、これはサービスになると思った。まだ証明できていないけど。

時間の使い方

全部を同時にアクティブ開発はしていない

「6つ同時に開発してるんですか?」と聞かれる。答えはNo。

プロダクトを2つのモードに分けている。

アクティブ開発(1〜2つ):

メンテナンスモード(4〜5つ):

今はLITMUSとAIのあとしまつがアクティブ。残りはメンテナンスモード。

受託との両立

自社プロダクトだけでは食べていけないので、受託開発もやっている。時間配分はだいたいこう。

| 活動 | 時間/週 | 正直なところ | |-----|---------|------------| | 受託開発 | 15〜20時間 | これが生活費。ないと困る | | アクティブ開発 | 15〜20時間 | 1〜2プロダクトに集中 | | メンテナンス全体 | 3〜5時間 | 朝のモニタリング含む | | コンテンツ・マーケ | 3〜5時間 | 正直ここが一番足りていない |

合計で週40〜50時間。サラリーマン時代と労働時間は変わっていない。違うのは、受託以外の時間が自分の資産を積み上げる方向に使われていること。…のはず。まだ積み上がった実感はそこまでない。

ある1日のスケジュール

朝(7:00〜9:00): 全プロダクトのVercelダッシュボードを確認。Cloudflareのアクセス状況を見る。問い合わせがあれば返信。この2時間で6つのメンテナンスが終わる。

午前(9:00〜12:00): 受託開発に集中。

午後(13:00〜18:00): アクティブ開発中のプロダクトに集中。

夜(20:00〜22:00): コンテンツ制作。このブログ記事もこの時間に書いている。

週末は基本的に開発しない。ソロ開発で一番怖いのは燃え尽き。全プロダクトが止まるから。

収益化の話 — 正直にいうと、まだ全然

ここが一番書きにくい部分だけど、Build in publicと言った以上は正直に書く。

今の収益構造

6つのプロダクトからの自社収益は、正直に言って生活費を賄えるレベルにはない。受託開発が収入の大部分を占めている。

プロダクトごとの収益モデルは4種類あるけど、どれもまだ「うまくいっている」とは言えない。

うまくいっていないことを整理すると

こう並べると厳しい。でもこれがリアル。

それでも複数プロダクトを続ける理由

じゃあなんで続けているのか。

1つは、まだ始めたばかりだから。個人開発で月5万円の収益が出るまでに1〜2年かかるという話はよく聞く。まだ諦めるタイミングではない。

もう1つは、どれが当たるかわからないから。6つのうち1つでも収益の柱になれば、その時点で他を整理すればいい。ポートフォリオ的なアプローチと言えば聞こえがいいけど、要は「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」の精神。

失敗から学んだこと

失敗1: 全部を同時にアクティブ開発しようとした

初期に6つ全部を同時に進めようとした。結果、どれも中途半端になった。「アクティブは最大2つ」というルールを作ってから、ようやく前に進むようになった。

失敗2: 技術的な興味だけでプロダクトを作った

webmusic.appがこれ。Web Audio APIが面白くて作り始めた。「誰がお金を払うのか」を考えていなかった。技術的には満足しているけど、ビジネスとしては今のところ意味をなしていない。

失敗3: マーケティングを完全に後回しにした

「いいプロダクトを作れば人が来る」と思っていた。来ない。本当に来ない。今は開発時間の20%をコンテンツ制作やSEOに充てるようにしている。このブログもその一環。

失敗4: 成功者のやり方をそのまま真似しようとした

Pieter Levelsのモデルを参考にしたけど、彼は英語圏でグローバルなトラフィックを持っている。日本語市場で同じことをやっても同じ結果にはならない。市場が違えば戦略も変えないといけない。これは当たり前のことなのに、しばらく気づかなかった。

これからやろうとしていること

まだ模索中だけど、今考えていることを書いておく。数ヶ月後に答え合わせしたい。

  1. このブログを定期的に更新する。 Build in publicをちゃんとやる。毎月の振り返りを書く。うまくいったこともいかなかったことも。
  2. SEOに本気で取り組む。 個人開発・ソロプレナー系のキーワードでこのサイトが検索に出るようにする。
  3. AIのあとしまつとLITMUSに集中する。 高単価の受託型サービスで、まず「受託以外の収益」を作る。
  4. うまくいかないプロダクトは正直に見切る。 全部を維持し続ける必要はない。

よくある質問

複数プロダクトを同時に運営するのに必要なスキルは?

フルスタックの開発スキルと、「70点でいいから全部自分でやる覚悟」。デザインもマーケもインフラも完璧にはできない。でも70点なら全部自分でやれる。そのラインを受け入れられるかどうかだと思う。

技術スタックは何を使っている?

Next.js (App Router)、Tailwind CSS、Supabase、MicroCMS、Vercel、Cloudflare。この構成なら新プロダクトの立ち上げが初日で完了する。全プロダクト共通にすることで、コンテキストスイッチのコストをゼロにしている。

1人で複数のWebサービスを運営する時間はどう確保する?

全部を同時にアクティブ開発しない。「メンテナンスモード」と「アクティブ開発モード」を切り替えて、常時アクティブは1〜2プロダクトに絞っている。

受託開発と自社プロダクトはどう両立する?

受託で生活費を確保して、残りの時間を自社プロダクトに投資する。コツは、自社プロダクトと技術スタックが同じ受託案件だけを受けること。技術の切り替えが不要になる。

個人開発で収益化できている?

正直に言うと、まだ満足できるレベルではない。受託が収入の大部分。でもこの状況をオープンにして、変化を記録していくのがこのブログの目的。数ヶ月後にまた書く。


この記事は、Float Engineeringの「全部見せる」シリーズの第1回です。毎月の振り返りや、各プロダクトの詳細な話も書いていく予定。同じようにソロで作っている人の参考になれば。