AIで作ったプロトタイプが止まったとき——次にやるべきことを整理する
Cursor、Bolt、Lovableでプロトタイプを作ったが、そこから先に進めない。本番化の壁の正体と、現実的な選択肢を解説する。
CursorやBolt.newでWebアプリを作った。画面はできた。ボタンも動く。データも保存される。デモで見せたら「いいね」と言われた。
でも、そこから先に進めない。
本番に公開するとなると、急に不安になる。セキュリティは大丈夫か。個人情報を扱っていいのか。サーバーが落ちたらどうするか。課金処理は正しく動くのか。
AIに「本番化して」と指示しても、AIは「はい、デプロイしました」と答える。でも実際には、本番に必要なことの大半が抜けている。
これが「プロトタイプが止まる」の正体だ。
AIが作れる70%と、残り30%の壁
AIコーディングツールが得意なことと苦手なことは、明確に分かれている。
AIが得意なこと(最初の70%):
- UIの生成(画面、ボタン、フォーム)
- 基本的なデータ操作(CRUD)
- APIとの接続
- 見た目の調整(CSS、レイアウト)
AIが苦手なこと(残りの30%):
- 認証・認可(ログイン、権限管理)
- セキュリティ対策(SQLインジェクション、XSS、CSRF)
- インフラ設計(サーバー、ドメイン、SSL)
- エラーハンドリング(想定外の入力、ネットワーク障害)
- パフォーマンス最適化
- 運用設計(ログ、監視、バックアップ)
- 決済連携(Stripe等の正しい実装)
この30%が、本番に出すかどうかを分ける壁になっている。
AI生成コードの具体的なリスク
「動いているから大丈夫」は危険な判断だ。具体的に何が起きうるかを整理する。
セキュリティ
調査によると、AI生成コードの40〜60%にセキュリティ上の脆弱性がある。
- ユーザー入力をそのままデータベースに入れている(SQLインジェクション)
- HTMLにユーザー入力をそのまま表示している(XSS)
- APIキーがソースコードにハードコードされている
- 認証トークンの有効期限が設定されていない
- ファイルアップロードの制限がない
これらは「動作確認」では見つからない。セキュリティの知識を持った人間がコードを読まないと、検出できない。
データの整合性
- 同時に2人がデータを更新したとき、片方の変更が消える
- 削除したデータが実は別のデータと紐づいていて、連鎖的に壊れる
- 日時の処理がタイムゾーンを考慮していない
運用時の問題
- エラーが起きてもログが残らず、原因がわからない
- サーバーが落ちても通知が来ない
- データベースのバックアップがない
止まったときの選択肢
プロトタイプが止まったとき、現実的な選択肢は4つある。
1. 自力で完成させる
向いている人: プログラミング経験がある。セキュリティの基礎知識がある。時間に余裕がある。
費用: 0円(自分の時間コストを除く) 期間: 1〜6ヶ月(スキルと複雑さによる)
注意点: セキュリティとインフラの知識がないまま本番公開すると、事故のリスクがある。特に個人情報や決済を扱う場合は、専門家のレビューを受けることを強く推奨する。
2. フリーランスに頼む
向いている人: 仕様が明確。技術の目利きができる。
費用: 10〜50万円 期間: 2〜4週間
注意点: AI生成コードの扱いに慣れたフリーランスは多くない。「最初から書き直したい」と言われるケースがある。また、コードレビューだけでなく、インフラ設計や運用設計もできる人を選ぶ必要がある。
3. 開発会社に頼む
向いている人: 予算がある。確実に本番化したい。
費用: 100〜500万円 期間: 1〜3ヶ月
注意点: 多くの開発会社は「最初から作り直し」を前提に見積もる。プロトタイプを活かしてくれる会社を探す必要がある。見積もりに2〜4週間かかるのが一般的。
4. プロトタイプを活かして「仕上げ」だけ頼む
向いている人: プロトタイプは動いている。残り30%だけを専門家に任せたい。
費用: 50〜120万円 期間: 2〜4週間
注意点: このサービスを提供している会社はまだ少ない。AI生成コードの構造を理解した上で、必要な部分だけを仕上げるスキルが求められる。
どの選択肢を選ぶか
判断基準は3つ。
1. 個人情報や決済を扱うか → 扱う場合、自力は避ける。セキュリティ事故が起きたときの損害が大きい。
2. プロトタイプの完成度 → 70%以上なら「仕上げ」で済む可能性が高い。50%以下なら、作り直しも視野に入れる。
3. 予算と時間 → 50万円以内・1ヶ月以内なら、仕上げ特化のサービスかフリーランス。100万円以上・3ヶ月以上なら、開発会社。
AIでプロトタイプが作れる時代になった。それ自体は大きな進歩だ。
ただし「作る」と「出す」は別のスキル。プロトタイプが止まったのは失敗ではなく、ここから先は別の知識が必要だというサインだ。自分の状況に合った選択肢を選べば、止まったプロジェクトは動き出せる。
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