ホームページ制作会社が廃業したときの対処法——ドメイン・サーバー・データを守る手順

ホームページ制作会社が廃業・倒産して連絡が取れない。ドメインやサーバーの確認方法、データの救出手順、乗り換え先の選び方まで、中小企業の経営者向けに具体的に解説する。


「ホームページを管理してもらっていた制作会社が、廃業したらしい。連絡がつかない。」

この相談が、年に何件も来る。

ホームページ制作会社が廃業すると、サイトが突然見れなくなる。メールが届かなくなる。最悪の場合、ドメイン(会社名.comなど)を第三者に取られる。パニックになるのは当然だ。

でも、落ち着いてほしい。状況によっては、サイトもドメインも取り戻せる。この記事では、制作会社が廃業・倒産して連絡が取れなくなったときに、何をどの順番でやるべきかを説明する。

なぜ制作会社の廃業で困るのか——業界構造のリスク

まず、なぜこんなことが起きるのかを知っておくべきだ。

ホームページ制作業界には、小さな会社やフリーランスが多い。1〜3人規模で運営しているところも珍しくない。開業のハードルが低い分、廃業もしやすい。体感では、10年以内に消える制作会社はかなり多い。

そして、多くの制作会社は「ドメインもサーバーも制作会社名義で契約」するやり方をしている。お客さんに代わって全部管理するから、お客さん側は楽だ。月額の管理費にサーバー代やドメイン更新費を含めている場合もある。お客さんは毎月お金を払うだけで、裏側で何がどう管理されているかを知らない。

これ自体は悪いことではない。ITに詳しくない中小企業にとって、全部お任せできるのはありがたい。

だが、制作会社がいなくなった瞬間、ドメインもサーバーも宙に浮く。管理画面のログイン情報がわからない。どこのサーバーを使っているかすら知らない。そういう状態になる。

正直に言うと、こうなってからでは手遅れのケースも多い。だからこそ、今この記事を読んでいるなら、できることを急いでやってほしい。時間が経てば経つほど、選択肢は減っていく。

連絡が取れなくなったら最初にやること

パニックになって新しい制作会社を探す前に、まず現状を把握する。病院に行く前に症状を整理するのと同じだ。

1. サイトが表示されているか確認する

まず自社のURLにアクセスしてみる。

表示されていても油断できない。サーバー契約の期限が来れば消える。制作会社がサーバー代を月払いしていた場合、支払いが止まった翌月にはサイトが消える可能性がある。年払いなら、契約満了まで数ヶ月の猶予がある。

スマホでもPCでも確認しておくこと。まれに「自分のPCのキャッシュで表示されているだけで、実際にはもう消えている」ということもある。シークレットウィンドウ(プライベートブラウズ)で確認するのが確実だ。

2. ドメインの名義を調べる

ここが最も重要なステップ。

WHOIS検索またはaguse.jpで、自社ドメインを検索する。「Registrant」(登録者)の欄を確認する。

WHOIS情報には、ドメインの有効期限(Expiration Date)も表示される。この日を過ぎるとドメインが失効するので、期限を必ずメモしておく。

3. 手元にある情報を全部集める

契約時の書類、メール、請求書——引き出しの奥やメールの検索で探してほしい。以下が見つかると、復旧の可能性が大きく変わる。

全部揃わなくても大丈夫。1つでも見つかれば、そこから芋づる式に状況が把握できることがある。

よくあるのが「制作会社からの納品メールにログイン情報が書いてあった」パターン。Gmailなら「ドメイン名」「サーバー」「ログイン」「パスワード」などで検索してみてほしい。数年前のメールが見つかることがある。

また、制作会社からの請求書や領収書にサーバー会社名(エックスサーバー、さくらインターネット、ロリポップなど)が記載されていることもある。サーバー会社がわかれば、直接問い合わせができる。

4. サイトのデータをバックアップする

サイトがまだ表示されている間に、データを保存しておく。

サーバーにアクセスできる場合: FTP情報があれば、FileZillaなどのFTPソフトでサーバーに接続し、ファイルを全部ダウンロードする。WordPressの場合はデータベースのエクスポートも必要だ。

サーバーにアクセスできない場合: Wayback Machineで過去のページが保存されていることがある。完全なバックアップにはならないが、テキストや画像をある程度回収できる。また、HTTrackなどのツールでサイトを丸ごとダウンロードする方法もある。ただし、これはHTMLの静的コピーで、WordPressなどの動的な機能は復元できない。

ケース別の対処法

状況によって対処法が変わる。自分のケースに近いものを確認してほしい。

ケース1:ドメインもサーバーも自社名義

最も良いパターン。

ドメインとサーバーの管理画面にログインできるなら、制作会社がいなくなっても自分で管理を継続できる。新しい制作会社にログイン情報を共有すれば、そのまま引き継ぎが可能だ。

やること:

  1. ドメイン管理画面にログインし、契約状況・有効期限を確認
  2. サーバー管理画面にログインし、契約状況・支払い方法を確認
  3. 支払い方法が制作会社のクレジットカードになっていたら、自社のカードに変更
  4. 新しい管理者(自社または新しい制作会社)にログイン情報を共有

ケース2:ドメインは自社名義だが、サーバーは制作会社名義

ドメインは守れる。サーバーが使えなくなったら、新しいサーバーを契約してデータを移せばいい。

やること:

  1. サーバーが生きている間に、FTPでサイトデータを全てダウンロード
  2. 新しいレンタルサーバーを契約する(エックスサーバー、さくらインターネットなど。月額1,000〜3,000円程度)
  3. 新しいサーバーにデータをアップロード
  4. ドメインのDNS設定を新しいサーバーに向ける

WordPressの場合は、データベースの移行も必要になる。自力でやるのが難しければ、この段階で新しい制作会社に依頼するのが現実的だ。費用は3〜10万円程度が相場。

ケース3:ドメインが制作会社名義

最も厄介なパターン。

ドメインの所有者が制作会社になっていると、その会社の協力なしにはドメインの移管(名義変更)ができない。制作会社が廃業して連絡が取れない場合、以下の順に試す。

1. 制作会社の関係者を探す 代表者の個人SNS、LinkedInなどで連絡を試みる。廃業しても個人としては存在しているはずだ。法人の登記情報(登記情報提供サービス)から代表者の氏名を確認し、連絡先を探す方法もある。

2. 破産管財人に連絡する 法人が正式に破産手続きをしている場合、破産管財人(弁護士)がいる。管財人経由でドメインの移管手続きができることがある。

3. ドメイン管理会社(レジストラ)に相談する お名前.comやムームードメインなどのレジストラに事情を説明し、名義変更の手続きを相談する。ただし、レジストラは基本的に「契約者の同意なしに名義変更はできない」というスタンスだ。登録者の情報が自社住所になっていれば対応してもらえる可能性がある。

4. ドメインの再取得を待つ ドメインが失効して一定期間(通常数ヶ月)経つと、誰でも取得できるようになる。ただし、失効後に第三者に取られるリスクがある。特に短くて覚えやすいドメインは狙われやすい。確実な方法とは言えない。

最終手段:ドメインを変える どうしても取り戻せない場合、新しいドメインでサイトを作り直す。この場合、SEOの評価はゼロからのスタートになる。GoogleマップやSNSに載せているURLも全て変更が必要だ。痛みは大きいが、ずるずる待ち続けるより再スタートを切るほうが良いこともある。

ケース4:WordPressサイトの場合の追加対応

WordPressサイトの場合、ファイルだけでなくデータベースの移行が必要になる。

確認すべきこと:

ログインできない場合でも、FTPでサーバーからファイルを取得し、phpMyAdminなどでデータベースをエクスポートできれば復旧できる。

WordPressサイトで、テーマが制作会社の独自開発だった場合は注意が必要だ。テーマのファイルは取得できても、そのテーマのアップデートやサポートは受けられなくなる。セキュリティ上のリスクもあるので、引き継ぎのタイミングで既存のテーマに載せ替えるか、サイトを作り直すかの判断が必要になる。

関連記事:Webサイトリニューアルで失敗する5つのパターン

制作会社の乗り換え——手順と費用

制作会社が廃業したあと、新しい制作会社に引き継ぐ場合の手順と費用感。

引き継ぎの手順

  1. 現状の情報を整理する(上記の手順で集めた情報をまとめる)
  2. 新しい制作会社に相談する(状況を説明し、対応可能か確認)
  3. ドメイン・サーバーの移管(必要に応じて)
  4. サイトの復旧・動作確認
  5. 保守管理契約の締結

引き継ぎにかかる期間は、ドメインとサーバーの情報が揃っていれば1〜2週間。情報がなくて調査から始める場合は、1ヶ月以上かかることもある。サイトが表示されなくなっている場合は、仮のページ(「現在メンテナンス中です」など)を先に出して、本格的な復旧はそのあとに進めるのが現実的だ。

費用の目安

作業内容費用目安
サーバー移行のみ(データそのまま)3〜10万円
ドメイン移管+サーバー移行5〜15万円
サイト復旧(データ破損あり)10〜30万円
サイト全体の作り直し30〜100万円以上

※規模や複雑さで大きく変わる。正確な金額は相談時に確認してほしい。

よくある誤解として「制作会社を変えたら、サイトを一から作り直さないといけない」というものがある。データがちゃんと残っていれば、サーバーを移すだけでそのまま動くことも多い。逆に、データが消えている・取得できない場合は作り直しになる。だからこそ、データのバックアップが最優先なのだ。

新しい制作会社を選ぶときのポイント

今回の経験を踏まえて、次は同じ失敗を繰り返さないために:

関連記事:開発会社の選び方——失敗しないための7つのチェックリスト

二度と困らないための予防チェックリスト

今、制作会社が廃業して困っている方も、すでに復旧が終わった方も、以下を確認しておいてほしい。

全てにチェックが入れば、制作会社がいなくなっても慌てる必要はない。

「ITに詳しくないから、自社で管理するのは不安」という声はよく聞く。だが、ドメインの管理は年に1回の更新(自動更新にしておけば何もしなくていい)。サーバーもクレジットカードの自動引き落としにしておけば手間はゼロに近い。年間の費用もドメインが1,000〜3,000円、サーバーが月1,000〜3,000円程度。「管理」といっても、実質やることは何もない。

大事なのは「自分名義で契約して、ログイン情報を自分で持っておく」こと。それだけで、制作会社がいなくなっても何も困らない。制作会社には「制作と更新」だけを頼めばいい。

関連記事:中小企業のWeb制作 完全ガイド

よくある質問

制作会社が廃業したら、サイトはすぐに消えるのか?

すぐには消えない。サーバーの契約期間が残っていれば、その間はサイトが表示される。ただし、サーバーの契約が月払いの場合、支払いが止まれば翌月には消える可能性がある。年払いなら契約満了まで猶予がある。いずれにせよ、表示されている間にデータのバックアップを取ることが最優先だ。

ドメインの有効期限が切れたら、もう取り戻せないのか?

切れてもすぐには取られない。ドメインには「復旧猶予期間」(Redemption Grace Period)がある。通常30〜60日程度。この期間内であれば、割増料金を払って復旧できることがある。ただし、レジストラによって対応が異なるので、期限が切れる前に動くべきだ。

制作会社名義のドメインを、勝手に移管することはできるか?

基本的にはできない。ドメインの移管には、現在の登録者(つまり制作会社)の承認が必要だ。ただし、契約書でドメインの所有権が自社にあると明記されている場合、レジストラや弁護士を通じて対応できる可能性がある。制作会社が法的に消滅している場合は、破産管財人に問い合わせることになる。

メールアドレスも使えなくなるのか?

独自ドメインのメールアドレス(info@会社名.comなど)を使っている場合、ドメインやサーバーが停止するとメールも届かなくなる。名刺、パンフレット、取引先への連絡——影響範囲が広いので、サイトと同時にメールの移行も考える必要がある。Gmail(Google Workspace)や Microsoft 365 に移行すれば、ドメインはそのままでメールサーバーだけ変更できる。

制作会社との間でトラブルになった場合、弁護士に相談すべきか?

ドメインの名義問題で制作会社(または破産管財人)と話がつかない場合は、弁護士に相談したほうがいい。注意点として、他の制作会社が間に入って交渉すると「非弁行為」に該当する可能性がある。新しい制作会社はあくまで技術的なサポートを行い、法的な交渉は弁護士に任せるべきだ。

自分でサーバーやドメインを管理できる自信がない。どうすればいい?

管理といっても、日常的にやることはほぼない。ドメインもサーバーも自動更新に設定しておけば、年に一度クレジットカードから引き落とされるだけだ。ログイン情報を安全な場所に保管しておけば十分。もし不安なら、新しい制作会社に「契約は自社名義で、管理を代行してほしい」と伝えればいい。名義が自社にあることが大事で、実際の操作は制作会社にやってもらっても問題ない。

保守管理契約は結んだほうがいいのか?

結んだほうがいい。月額5,000〜20,000円程度で、WordPress本体やプラグインのアップデート、セキュリティ対策、バックアップを定期的にやってもらえる。保守管理なしで放置すると、セキュリティの脆弱性を突かれてサイトが改ざんされるリスクがある。特にWordPressは利用者が多い分、攻撃対象にもなりやすい。

まとめ

制作会社が廃業して困っている方へ。順番をまとめる。

  1. まずサイトが表示されているか確認(表示されていれば時間的猶予あり)
  2. WHOIS検索でドメインの名義と有効期限を確認
  3. 手元にある情報(ログインID、契約書など)を全部集める
  4. サイトが表示されている間にデータをバックアップ
  5. 新しい制作会社に相談し、引き継ぎを進める

最も大切なのは、復旧後に「次は自社でドメインとサーバーを管理する」体制を作ること。これだけで、同じ問題は二度と起きない。


この記事を書いているFloat Engineeringは、中小企業向けのWeb制作・サイト引き継ぎを手がけています。 代表が直接お話を聞いて、そのまま自分の手で対応します。「制作会社がいなくなって困っている」「今のサイトをどうすればいいかわからない」——そんな相談を何件も受けてきました。

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