WordPressをやめたい——保守費・速度・セキュリティ、理由別の乗り換え先と費用
WordPressの保守費が高い、表示が遅い、セキュリティが不安。やめたい理由別に、乗り換え先の選択肢(保守業者の変更・STUDIO等のSaaS・静的サイト化)を費用と判断基準つきで比較する。
WordPressは日本の中小企業サイトで最も使われているCMSだ。同時に、「やめたい」と検索されるCMSでもある。
保守費を毎月払っているのに何をしてもらっているかわからない。表示が遅い。改ざんのニュースを見るたびに不安になる。「自分で更新できる」はずだったのに、結局更新のたびに業者に頼んでいる。
この記事は、WordPressをやめたくなった中小企業向けに、乗り換え先の選択肢を費用と判断基準つきで整理する。先に結論を書くと、全員がやめるべきではない。やめたい理由によって、正解は変わる。
なぜWordPressをやめたくなるのか
相談でよく聞く不満は4つに集約される。
1. 保守費が高い
月額1〜5万円の保守費。内訳は「WordPress本体・プラグインのアップデート、バックアップ、セキュリティ監視」。年間にすると12〜60万円。5ページのコーポレートサイトの維持費としては重い。
2. 表示が遅い
スマホで開くと数秒待たされる。高速化プラグインを入れても劇的には変わらない。PageSpeed Insightsのスコアが30点台。
3. セキュリティが不安
WordPressは世界のサイトの4割以上で使われている分、攻撃側にとって最も割のいいターゲットだ。プラグインの脆弱性を突いた改ざん・スパム踏み台化は、放置されたWordPressサイトで実際によく起きる。
4. 結局、業者頼み
「管理画面から自分で更新できます」が売り文句だったのに、レイアウトが崩れるのが怖くて触れない。結局、テキスト修正1回1万円で業者に依頼している。
重要なのは、この4つの不満の原因はすべて同じということ。WordPressが「サーバー上でPHPとデータベースを常時動かし、プラグインで機能を足していく」仕組みだからだ。動く部品が多いから、保守が必要で、遅くなりやすく、攻撃対象面が広い。
やめる前に確認すること
WordPressをやめて後悔するケースもある。先に3つ確認してほしい。
- ブログや記事を頻繁に更新しているか。 週1以上のペースで社内の複数人が記事を書いているなら、WordPressの編集画面は依然として便利だ。やめるとしても、記事投稿の代替手段(後述)が必要になる
- プラグイン依存の機能はあるか。 予約システム、会員機能、ECをプラグインで動かしている場合、移行は単純なサイト載せ替えでは済まない。機能ごとに代替を検討する必要がある
- ドメインとサーバーの名義は自社か。 制作会社名義の場合、移行の前にまず名義の整理が必要だ。詳しくはドメインとサーバーを自社名義にすべき理由に書いた
この3つに引っかからない——つまり「更新は月数回以下、機能はお知らせとフォーム程度、名義は自社」なら、WordPressを使い続ける理由はかなり薄い。日本の中小企業サイトの大半はこちら側だ。
乗り換え先は実質3択
| 選択肢 | 初期費用 | 月額 | 向いている場合 |
|---|---|---|---|
| ① WordPressのまま保守業者を変える | 0〜10万円 | 5千〜3万円 | 不満が「今の業者」だけの場合 |
| ② STUDIO・Wix等のSaaSに移る | 0〜30万円(自作なら0) | 1千〜5千円 | 自分で運用したい・デザイン簡素でOK |
| ③ 静的サイト(Next.js等)に作り替える | 10〜50万円 | 0〜1千円程度 | 保守費をなくしたい・速度と安全を根本解決したい |
① WordPressのまま、保守業者だけ変える
不満の対象が「WordPress」ではなく「今の保守業者」なら、これで解決する。保守費の適正相場と見直し方はWordPress保守費用の相場に書いた。
ただし、遅さとセキュリティリスクの構造は変わらない。数年後に同じ不満が再発する可能性はある。
② STUDIO・Wix・ペライチ等のSaaSに移る
月額数千円で、サーバー管理もアップデートも不要になる。自分で運用する前提なら有力だ。ツールごとの比較はホームページ自作ツール比較を参照。
弱点は、デザインとカスタマイズの自由度、そしてプラットフォーム依存。サービスの料金改定や仕様変更をそのまま受けることになる。エクスポート機能が弱いツールだと、次の引っ越しが大変になる。
③ 静的サイトに作り替える
Next.js等で構築し、Vercel・Cloudflare Pagesなどに置く構成。ページが事前に生成されたファイルとして配信されるため、
- 保守費がほぼゼロになる。 サーバー上で動くプログラムがないので、アップデート対応という作業自体が消える。ホスティング費用も小規模サイトなら無料枠〜月数百円
- 速い。 データベースを経ずにファイルを返すだけなので、表示速度は構造的に有利。PageSpeed Insightsで90点台が普通に出る
- 改ざんの対象面が小さい。 ログイン画面もデータベースもプラグインもないので、WordPressで typical な攻撃手法がそもそも成立しない
弱点は、更新に仕組みが必要なこと。お知らせやブログを更新したい場合は、microCMSのような日本製ヘッドレスCMSをつなぐ(管理画面から記事を書ける。低頻度なら無料枠で足りる)か、更新を制作側に依頼する運用になる。更新がほぼないサイトなら、この弱点は実質存在しない。
このサイト(Float Engineering)自身がこの構成だ。Next.js + Vercelで、お知らせはmicroCMS、ブログはファイルベース。サーバー保守という作業は発生していない。
移行で失敗しないためのチェックリスト
どの選択肢でも、移行時の事故ポイントは共通している。
- URLの維持とリダイレクト。 ページのURLが変わる場合、旧URLから新URLへ301リダイレクトを設定する。これを怠ると、積み上げた検索順位を失う
- メールへの影響。 サーバー移転を伴う場合、同じサーバーでメールを運用していると設定を誤ればメールが止まる。手順はドメイン移管・サーバー移転の進め方に書いた
- データの確保。 移行前に、WordPress側のフルバックアップを必ず手元に取る。取り方は制作会社が廃業した場合の救出手順と同じだ
- フォームの送信テスト。 問い合わせフォームは移行後に必ず実送信で確認する。問い合わせが届かないサイトは、存在しないのと同じ
自分でSTUDIO等に移る場合も、このチェックリストはそのまま使える。逆に言うと、リダイレクト設計とメール移行に不安があるなら、そこだけでも専門家に依頼する価値がある。
判断フロー
まとめる。
- 不満は「業者」だけ → ① 保守業者の変更
- 自分で運用したい、デザインは簡素でいい → ② SaaSに移行
- 保守費をなくしたい、速度・セキュリティを根本解決したい、更新は月数回以下 → ③ 静的サイト化
- 予約・会員・ECなどプラグイン依存の機能が多い → 機能ごとの個別検討が必要。まず現状整理から
この記事を書いているFloat Engineeringでは、WordPressから Next.js 静的構成への移行を請け負っています(10万円〜)。 代表が直接ヒアリングして、そのまま自分の手で移行します。自社サイトも同じ構成で運用しています。
「うちの場合はどの選択肢か」を知りたいだけの相談でも構いません。①や②が合っていると判断したら、そうお伝えします。